HOME>>記憶の中の旅の記>> その02 …… 妹背の滝(2008年07月)


 2008年7月7日、広島県廿日市市大野にある妹背の滝へ出かけた。とても暑い日だったように記憶している。JR山陽本線の大野浦駅から徒歩で訪ねたのだが、道中、並々ならぬ暑さに閉口して、タクシーにすればよかったと何度も愚痴をこぼした。
 結局、その愚痴は吹き飛ばされることになった。重い三脚に愛用のOM-1、息を切らせながら、ようやくお目当ての場所にたどり着くことができた。妹背の滝の起点となる大頭神社の境内を抜けて、しばらく歩くと毛保川の雌滝が姿をあらわした。私はとりあえず三脚をセットし、愛機OM-1で対象にピントを合わせた。
「なるほど、悪くない」
 なかなかの景色である。さらに奥へと歩をすすめると、その雄滝が目の前に現われた。

撮影機種:OLYMPUS OM-1 G-ZUIKO28mm f/11 1s ISO100 ND4 PL MF

 
 前々日あたりに雨が降ったおかげだろうか、水量は申し分なかった。私が三脚をセットしたあたりでは、複数の家族が浅瀬で水遊びに興じている。雄滝の想像以上の雄々しさに圧倒されつつ、とりあえずシャッターを切った。自宅から、たかだか数十分で見事な雄滝を鑑賞できるのは稀有なことだと考えつつ、私は何度かレンズを交換しながら、シャッターを切りつづけた。


撮影機種:OLYMPUS OM-1 E-ZUIKO135mm f/56 1/2s ISO100 ND4 PL MF

撮影機種:OLYMPUS OM-1 G-ZUIKO28mm f/11 1s ISO100 ND4 PL MF


 これだけの滝でありながら、あまり観光化されていないことに感心した。水の音はあくまで清々しく、しっとりとした空気は私の病んだ身体を包み込み、近くの浅瀬ではしゃぐ子供たちの声とあいまって、いつになく穏やかなこころもちにさせてくれた。
「こんな場所があったんだ…」
 妙に納得して一人肯く私の顔は、おそらく微笑んでいたのだろうと思う。

※向かって左…雌滝

撮影機種:OLYMPUS OM-1 G-ZUIKO28mm f/8 1s ISO100 ND4 PL MF
撮影機種:OLYMPUS OM-1 E-ZUIKO135mm f/8 1s ISO100 ND4 PL MF


  そんなふうに上機嫌でファインダーを覗いていると、一人の青年がファインダーの中に割り込んできた。よほど滝が好きで近くから眺めているのだろうか。そう考えた私の思惑を裏切るように、彼は上半身の衣服を脱ぎ棄て、滝の中深くへと入っていったのである。
「えっ」
 私は彼の思わぬ行動に唖然とした。

撮影機種:OLYMPUS OM-1 E-ZUIKO135mm f/8 1s ISO100 ND4 PL MF


「修行か…」
 修行などとは縁もゆかりもない私は、初めて目の当たりにする滝行の凄まじさを心ゆくまで堪能して、その場を後にした。

 そういえば、私の他にも目撃者がいたのである。子供を連れて水遊びに来ていたどこかのお母さんもまた、その光景を食い入るようにいつまでもいつまでも見つめていた……。

 

 

  
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