HOME>>記憶の中の旅の記>>その03-2 …… 岩国[宇野千代の庭](2009年11月23日)


 心地よい場所はおのずと空間美を有している。当然、配置が重要な要因となるが、それを行ない得るのは、やはり才能を待たねばならない。いつのまにかそこにある場所にも才能が関与しているのは当然のことである。その才能がその場所を美しいと感じさせ、記憶に残させるのである。
 私はそんな場所をいくつも見てきた。この場所もその一つである。景色に迎合するのではなく景色を批評する。その姿勢が旅をいっそう楽しくさせてくれる。

 

撮影機種:OLYMPUS E-3 SIGMA APO 140mm f/5 1/400 ISO100 絞り優先AE

 

 紅葉は紅いのだが、そのメカニズムにあまり興味はない。秋になれば紅くなる。それ以上の説明は、私には不要だ。ゆらゆらと冷たい空気の中で紅くなる。ただただ、秋になれば紅くなる。それはとてもロマンチックなことだと思う。

 

撮影機種:OLYMPUS E-3 ZUIKO DIGITAL 20mm f/6.3 1/60 ISO160 絞り優先AE

 
「ああ、白壁に紅葉は似合うなぁ」
と、素直に感動を覚えた。かつてそういう意図を持って、ここにこの樹木を植えた人がいることを思い、歴史の重厚さを感じた。


撮影機種:OLYMPUS E-3 ZUIKO DIGITAL 18mm f/6.3 1/100 ISO125 絞り優先AE


「月に雁」に匹敵するほど、日本の屋根と銀杏の落ち葉は相性が良い。
 これは吉香神社にあった手水舎の屋根だったように記憶している。吉香神社は旧岩国藩主吉川家の先祖を祀っており、吉川氏初代藩主は吉川元春の次男広家である。関ヶ原において毛利輝元の代わりに総大将として出陣した毛利秀元は、吉川広家によって南宮山を駆け下ることを阻まれ、結果的に毛利家は120万石から36万石に厳封されることとなった。輝元も秀元も広家をおおいに憎み、そのため本藩たる長州藩はとうとう岩国藩を支藩として幕府に届け出ることなく大政奉還を迎えている。というわけで、岩国藩が諸侯に列するのは明治の新政府が成立して以降のこととなった。


撮影機種:OLYMPUS E-3 SIGMA APO 140mm f/4 1/160 ISO100 絞り優先AE


 錦帯橋周辺の錦川沿いには、吉香公園の園内を含めて3,000本の桜が植えてある。その桜の葉は秋になるとすべて紅く染まる。錦帯橋の上からその桜と甍が見えた。

 

撮影機種:OLYMPUS E-3 SIGMA APO 236mm f/2.8 1/640 ISO100 EV+0.7 絞り優先AE


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