HOME>>記憶の中の旅の記>> その05 …… 大崎下島[御手洗] (2009年04月18日)


 天井には裸電球があった。かつて私たちが子供の頃を過ごした家屋が再現されているようだ。いや、再現ではなく、これがこの島の現状なのかもしれない。
「進化や進歩が幸福とは限らない」
 ふと、そんなことを考えた。あの頃、私は決して不幸ではなかった。むしろ今よりずっと生き生きとしていたように思う。線路端でギンヤンマを追い、蓮田でザリガニを取った。何気なくそんなことを思い出して、ふーっと大きくため息をついた。


撮影機種:OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 108mm f/3.5 1/100 ISO800 絞り優先AE


 このテレビには見覚えがある。伯父の家にあったテレビだ。スピーカーが画面の両脇に配され、いかにも重厚なテレビである。しかし、あの頃ステレオ放送があったかどうかは記憶にない。とりあえずステレオのレコードはあったが、おそらくテレビでのステレオ放送はなかったように思う。

撮影機種:OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 108mm f/3.5 1/6 ISO800 絞り優先AE


 しばらく歩くと神社があった。立派な擬宝珠だと感心して、シャッターを切った。海に面した神社は明るく、いかにもこの島には似合っていた。
 記憶をたどるということは、なかなか難しい。考えてみればこの島を訪れたのは7年も前のことである。つい、この間のことのように思うのだが、実際は、ずいぶん時を経ている。しかし、写真を撮っておいたおかげで、かろうじて当時を振り返ることが可能となる。こうしてあの時の写真を見返せば、確かに明るい光だったことを思い出す。

撮影機種:OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 70mm f/3.5 1/250 ISO100 絞り優先AE


 風の記憶もある。ほどよく心地よい海風が吹いていたことを憶えているのだが、潮の匂いはあまり記憶にない。ただただ景色ばかりが印象に残っている。それほど私はこの景色に魅了されていたのだろう。この場所に佇んでいる。その事実を私は心底楽しんでいたのだろうと思う。


撮影機種:OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 28mm f/16 1/60 ISO400 絞り優先AE


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